ファーストビュー

僕は内臓を
ひっくり返せているのか。

三浦大紀(みうらひろき)

株式会社シマネプロモーション代表取締役社長

---「BLUE GIANT」で印象に残っているのは、どんなところですか?

主人公・大(ダイ)のキャラクターがおもしろいですね。僕の好きなシーンは、まず一つは犬のバーナムが死んだところです。「バーナム・ラブ」という曲を大が吹いて、飼い主の本村さんがそれを聴いて感動するところは、あとがきにも書かれていますが、本からは音が聞こえてこないんですけど、伝わるものがありました。あの演奏はすごくよかったでしょうね。

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あとは、平さんのコメントです。「内臓をひっくり返すくらい自分をさらけ出せ」って、いいですよね。僕は内臓をひっくり返せているのか、と。

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8巻で大が、壁にぶつかった雪祈(ユキノリ)のことを、その壁を「まあ、破るでしょうね」と平さんに言うところも印象に残っています。この言葉に大のキャラクターが集約されているなと感じます。人を信じるって難しいじゃないですか。大は、一貫して人を疑わないですよね。他のせいにしない。そういう彼の考え方は、他のシーンからも感じますね。大みたいな人物が友達だったらおもしろいだろうな。

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大は「世界一のサックスプレーヤーになる」という明確な目標があって突き進んでいますよね。こういう人が周りにいると、もちろん彼の演奏を聴きたいし、きっといいだろうなと思います。応援できる人が近くにいると楽しいじゃないですか。気づきや刺激があって、そういうのはすごくいいなと思いながら読みました。

「BLUE GIANT」を読んで、自分にとって「チャレンジ」とは何かを改めて考えたのですが、「探究心」だと思いました。探究し続けること。何かにチャレンジしようというモチベーションは、探究していないとうまれてこないと思うんです。降って湧いてくることではありませんから。

大はずっと“いい演奏”を探究し続けてるじゃないですか。僕も日々自分の暮らしそのものや暮らしている町がいかにおもしろくなったらいいかを探究し続けているんです。それを探すのはおもしろいです。新しい気づきがあると興奮しますね。そういう意味では、大に自分を重ねて共感しましたね。

---貴社(シマネプロモーション)のHPに「島根=ご縁の土地」というのがありますが、“ご縁”という考え方は三浦さんが島根で育ってきた中で影響を受けているのでしょうか。

正直意識したことはないですが、あらためてまわりの人から“ご縁”って島根の人はよく言ってるよねと言われると、それはすごくいいことだなと思います。自分たちは無意識ということですから。「BLUE GIANT」の演奏シーンでもそうですが、無意識にできる境地に行くって、すごいことでしょ。でも文化や習慣ってそういうものなんだと思います。まさに無意識。自分自身にしみ込んでいる状態が最強だと思うんです。無意識に、習慣的にやっている日常そのものに価値があるということですね。

---大も玉田も、誰かに努力しろ、やれと言われてるわけではなく、しみ込んでいるから、やってるんですよね。

やりたいと、自ら努力するじゃないですか。やらないといけないことになるとモチベーションは上がりませんよね。

大が「世界一のサックスプレーヤーになる」と決めたときに、「じゃあ次に何をやらなければいけないのか」、彼はたぶん肌感覚で分かっていて「海外に行く」ことを選んだのだろうと思うんです。海外に行くことが目的ではなくて、世界一のサックスプレーヤーになるという大きな目標に向かって、自分に課した、次にやること。

旅立とうとする大に、「『世界のプレーヤー』になる奴は、どこから始めても『世界のプレーヤー』になる」って師匠が言ってますよね。

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大は世界一のサックスプレーヤーになった自分を想像したときに、今足りないものが何か、どうすれば成長できるかを感じて、すべてを決めているんですよね。大はずっと自分で決めてるじゃないですか。サックスをやるとか、東京に行くとか、玉田を仲間に入れるとか。

僕、決めるのがあまり得意ではないんです。考えすぎると結局は決断が鈍るんですよね。そしてブレる。あのときこうしておけばよかったとか、決められないままずるずる行ってしまったりということもあったりしましたね。

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作中にBLUE NOTE TOKYOを思わせる「So Blue」というお店が出てきますよね。僕は大学のときにDJを始めて、イベントをしたりもしていました。今はレコードを買うぐらいですけど、当時、仲間とバイトのギャラで、BLUE NOTE TOKYOのボックス席に座って、ご飯を食べて、ワインを頼むというのが、僕らのご褒美だったんです。

THE ROOTSというヒップホップのグループのライブをBLUE NOTE TOKYO聴いたことをがあるんですが、いつもレコードで聴いてる音を生で聴いて、ほんと鳥肌立って興奮しました。さらにそのライブ終盤に、「今日はスペシャルゲストがいる」って、AFRA(アフラ)という日本人アーティストがステージに上がったんです。あの共演のシーンは本当に感動しましたね。最高だったね、って興奮して帰りましたよ。

そのときのことも読みながら思い出しました。

思い続けてそうなるってすごいなと。でも、思い続けないとそうはならないんですよね。いろんな刺激をもらえる作品ですね。

PROFILE

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三浦大紀(みうらひろき)

株式会社シマネプロモーション代表取締役社長

1980年島根県浜田市生まれ。早稲田大学卒業後、国会議員秘書、国際NGO職員などを経て、江津市ビジネスプランコンテストを機に東京からUターン。地元のNPOで、店舗誘致や起業支援などを担当後、2014年株式会社シマネプロモーションを設立。コミュニティづくりの経験を活かし、まちづくりや地域・企業の魅力化事業を行う。