ファーストビュー

何も言わず、
「読めばわかる」。

人見良一(ひとみりょういち)

株式会社ブルーノート・ジャパン 企画・制作部

---「BLUE GIANT」という作品に初めて触れたタイミングについて教えてください。

連載が始まって少しした頃に、噂は聞いていました。NHK Eテレの「SWITCHインタビュー達人達(たち)」の収録を弊社のBLUE NOTE TOKYOでやったんです。ピアニストの上原ひろみさんと石塚真一先生の。その後コミックスを買って読みました。

収録後に石塚先生と担当編集者さんがふたりでいて、僕は横にいたんですが、石塚先生が「上原ひろみさんは、バスケットボールの世界で言うとマイケル・ジョーダンだよ、神様だよ!」と興奮しながら説明していたのがすごく印象に残っています。その日は特にお話ししたりはなかったんですが、そのあと上原ひろみさんの公演時に来店されて。その時から先生と話をするようになりました。

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---ご自分から若いアーティストに会いに行かれたりはするんですか?

そうですね、評判のいい若手のアーティストがいれば実際観に行ったりとかはします。

---そういう方達とどういう話をされるんですか?

ほとんど話をすることはないですね。ライブを観れば、その人がどういう人か、今何を考えてるか、なんとなくそういうのが見えてきます。やはりアーティストは表現するのが仕事なので。いいと思ったら「ちょっと興味があるから」って声をかけます。

---作中で好きなシーンはどこですか?

まず3巻の文化祭の大(ダイ)と黒木先生とのセッション。ここはほんとに音が聞こえてくるような感じでした。

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あとは、平さんが雪祈(ユキノリ)を代役で起用するシーン。9巻かな、同じような経験があるので。やはりアーティストも人間なので体調不良とかあって、そういうときに誰か代役を、というのはおこりえるんです。だからこのときの、一呼吸おいて覚悟を決める瞬間、分かりますね。

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---人見さんの仕事柄、感情移入するのはやはり平さんですか?

だけでなく、やはりプレーヤーの大や玉田、雪祈に対しても、心の変化であったりとかは共感しますね。楽屋裏でずっとアーティストをサポートする立場でもあるので、すごく共感できますね。

平さんは、今の仕事をやっている以上、目標になったりします。厳しいことも愛情をもって的確に伝えたりしているところは、特にそうですね。

---大のように、海外に出ていくアーティストを見送られることも多いですか?

どちらかというと、海外で修業した人が戻ってきて、迎える機会の方が多いですね。いくら演奏やパフォーマンスの技術を向上させても、日本では知名度が低かったりする。ただやはり音楽に対する情熱はとても強いのです。実際BLUE NOTE TOKYOで公演をしてみても成功するかは誰にもわからないけれども、平さんのシーンじゃないですが、覚悟を決めたらそのアーティストを信頼して、成功するように形を作っていくしかないので。

---仕事としてジャズに携わられていますが、その魅力を教えてください。

まず、同じ演奏が二度とないことですね。CDの音を忠実に再現するようなライブではなくて、たとえばお客様の熱意を感じ取ってアドリブとかソロが変化して、それでどんどん盛り上がっていく、っていうライブはおもしろいですね。

たまにすごい演奏に発展する時があって、もう音が渦みたいに空間を支配するっていう。もう演っているアーティスト本人も、お客様もその空間にいる全員が音の渦に巻き込まれるみたいな。やっぱりそういうライブに出会えたら、ハッピーですね。

だから日々、どうしたらそういうライブに発展するか、考えながらやっています。例えば舞台裏の話ですが、ライブまでのアーティストへの対応もそうですし。お客様も敷居が高いイメージをお持ちの方が多いので、肩の力を抜いて、音楽を純粋に楽しんでほしいと思います。

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---もし親しい人が「BLUE GIANT」を読んでいなかったらどう薦めますか?

なんだろう・・・「いいから見てみ」って渡しちゃう気がするな。何も言わず、「読めばわかる」って。

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人見良一(ひとみりょういち)

株式会社ブルーノート・ジャパン 企画・制作部

1978年生まれ。