ファーストビュー

モチベーションを上げてくれる
作用がある。

澤井芳信(さわいよしのぶ)

株式会社スポーツバックス代表取締役社長

---「BLUE GIANT」という作品との出会いについて教えてください。

出会ったのは去年。僕、出会いは遅かったんですよ。きっかけは、同い歳の幼馴染で一番の親友。独立して京都で弁護士をやっていて、彼と僕は、映画と漫画と、あとスポーツで青春時代を過ごしてきたんです。で、「最近面白い漫画ある?」と聞いた時に、「BLUE GIANT」がヤバイぞと。それで読んでみたら、「これはヤバイ!」と。一気に読みました。
目標というか、壮大な夢に向かう話なんですけど、それに真っ直ぐ進む。それが、むちゃくちゃ熱い。

---主人公の大(ダイ)に共感する点もありますか?

前提として、この漫画には、自分のモチベーションを上げてくれる作用があると僕は思っていて。
ジャズという世界を、この作品を読んだからこそ知ることができて、CDも買っちゃう。大の人生を見ていく中で、そういうものを一番感じています。

その中でも共感するのは、僕には兄貴がいるので、お兄さんが大のためにお店で一番高いサックスを買う話です。36回ローンを払い終わって「チョロいもんだ」って、ポロっというじゃないですか。あのシーン。

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僕は、兄貴が野球をやっていたから野球を始めたんです。結局兄貴は途中で辞めるんですけど。甲子園の決勝に出た時も、仕事があって、チケットを手に入れるのも難しかったのに、なんとかして観に来てくれたり。

---やはり大に一番感情移入しますか?

そうですね。僕は言わないと目標には近づけないということを、ずっと思っていて、言うからこそパワーがあって、周りにも応援してくれる人が増える。

高校の野球部に入って初めて同学年の部員だけで集まった時、「僕らの代で絶対甲子園に行こうな」って言っていました。まぁ、初めは笑われたかもしれないですけど、本当に甲子園に行きましたからね。

だから「世界一のサックスプレーヤーになる」と公言する大に共感しますね。

---作中には、極限の努力とその先の、持つ者と持たざる者の話が出てきますよね。

よく分かります。僕は甲子園の決勝で松坂大輔とやってますから。松坂は高校卒業した次の年にはプロなので、トップを見られたというのが、僕の中では良かった。「ただ、あそこに追いつきたい」という思いがあったし、彼を見ているからこそ、他のどんなピッチャーを見ても驚くことはなかったですね。

才能あふれるピアニストの雪祈(ユキノリ)や努力のドラマー・玉田にも、すごく共感できるところがあるんです。雪祈の言う「才能だ、そこに行けるのは」というのが、すごく分かるんですよ。上を見ているからこそ、そうでないものが見えてしまう。でも、玉田みたいにガーッとやって、上に追いついていくこともできる。だから、「それにかける想いの強さ」だと思うんですよ。

玉田も雪祈も大も、みんな純粋なんですよね。大と雪祈が圧倒的に上手い中で、玉田は引っ張り上げられていく訳です。高校時代の僕らも、上は上で上がっていかないといけない、下も上についていかないといけないというような、そういう空気がありました。本当に超がつくほど練習するヤツばっかりで。決して上手い選手ばかりではなかったんです。

---澤井さんがマネジメントされている上原浩治投手(シカゴカブス)もすごいメンタリティーですよね。

そう。だから漫画の「BLUE GIANT」がすごいなって思うのは、作られているものなんですけど、すごく感情移入できるし勉強にもなって、僕も頑張ろうと思える。スポーツ選手と同じものもすごく感じます。
大の場合は世界一のプレーヤーになることを目指していて、「なれたらいいな」、だったらなれない。明確な目標について、そこに100%で注力できることがすごい。

僕のような普通の働いている人間たちがこれを読むのは、憧れるからですよね。この想いってすごいなって。

---一番印象的なシーンはどこですか?

一貫して、どんな場面でもどんな環境でも練習し続けているところですね。どんな寒い日でも、どこへ行ってもまずは吹く。
そうありたいなと思います。だって、自分でルール決めて、自分で守ってるわけでしょ。それってなかなかできない。

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あと、「BLUE GIANT」のすごいところは、演奏シーン。漫画だから音が聞こえるわけでも振動が伝わるわけでもないのに、圧が来ます。これってすごいことだと思う。

---雪祈についてはどう思われますか?

めちゃめちゃ共感しますよ。「才能が全て」って言うのとか、本当に分かる。
それに雪祈はあの素直さがすごいじゃないですか。平さんに「君のピアノはつまらない。バカにしてないか?」と言われた後に、平さんのお店の「SoBlue」の前に行って「あの人、いい人だな」って言うでしょ。普通なら「なんだ、あの人」ってなる。上手くなりたいが為の素直さっていうのがあって、彼には大事なそれがある。

今この世界で、自分の価値観だけで勝負してたら、絶対生き残っていけない。ある程度のことを受け入れながら選択していかないと、生きていけないと思うんですよ。
でも、あそこで「いい人だな」って言える、上手くなりたいがためのキャパの広さを持つ人は、そう多くはないと思うんです。自分が行き詰まっていることを分かっているがために、自分の目標があるがために出る言葉なんですね。だからこそ、格好いいなって思いました。

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あと僕、この漫画いいなって思うのが、コミックスの各巻の最後に、大に接した人のインタビューがあるところ。あれで、読者の中の大のイメージがすっごく大きくなる。あれがあるから楽しい。
雪祈だったり玉田だったり、作中で大に接した人と同じように自分も見られるんです。
いろんな登場人物がいて、玉田みたいなヤツがいるのもいい。成功者だけの物語って、自分はあんまり読みたくならないから。

---最後に、この作品は、ご自身の周りのどんな方に読んでもらいたいですか?

単純に、元気になりたい人。思い悩んでる人とか。でもあらゆる人に読んでほしい。パワーをくれる漫画ですからね。
自分に弱いところって多いじゃないですか。だけど大はそこに強い。現実の世界に生きていると分りやすいことって少ないけれども、「BLUE GIANT」を読んでいて、こうでありたいなと思うんです。

PROFILE

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澤井芳信(さわいよしのぶ)

株式会社スポーツバックス代表取締役社長

1980年生まれ。京都成章高校で「一番・ショート・主将」としてチームを率い、春夏連続で甲子園出場。1998年夏の甲子園準優勝。
同志社大学に入学後は、硬式野球部に所属。
大学卒業後、社会人野球「かずさマジック」(元新日鉄君津硬式野球部)に入団。
4年間の現役生活を経て引退。その後、スポーツマネジメントの会社に転職。
2013年にアスリートのマネジメントを行う株式会社スポーツバックスを設立し、代表を務める。